【日程】2018/07/14-16
【場所】北岳バットレス 第四尾根~中央稜ノーマルルート 継続
【構成】ふくだ・こうの
【形態】無雪期 アルパインクライミング
【天候】全日快晴&猛暑
【行程】
7/14(土)
芦安BT--広河原BT--白根御池小屋 BC設営(幕営)
7/15(日)
[1:30/2:30]BC発--[4:15]Bガリー大滝[4:40](2p)--[6:00]四尾根取り付き--(6p)
--[8:20]四尾根終了点[8:50](懸垂50m1p)--[9:20]中央稜リンネ内--(5p)
--[11:40]中央稜終了点(北岳山頂)--[14:30]BC(幕営)
7/16(月)
[5:00/6:30]BC--[8:00]広河原BT--[9:00]芦安BT
--------------------------------------------------------------------------------------------
夏山恒例の北岳に行ってきました。もちろん今年も北岳で集中!
例年ならまだ梅雨が明けずにやきもきしている時期なのですが、今年は梅雨明けから既に2週間以上過ぎてる夏山真っ盛り。
いつもなら天気図とにらめっこしながら僅かな晴れに期待して計画する北岳なのですが、休日として制定されて初めてかも知れない正真正銘の海の日になって、一般ルートの他、バットレスも多くのパーティーが入っていました。
今回の中央稜はバットレスで残った最後のルート。崩落するとは思いもしない7年程前に中央稜の構想をしてから2年、実力も伴ってきてそろそろ行こうかなと算段していた矢先に枯れ木テラス上が崩落して頓挫していました。
その後毎年バットレスの各ルートに入るたびにCガリーを確認していると、昨年あたりからそろそろ入れるんじゃないのと感じられる状況になってきていました。なぜなら、崩落翌年にピラミッドフェースに入った際のCガリーのガレは足を置いた途端に岩雪崩になってCガリーの大滝に落ちて行ったほどでしたが、昨年あたりから踏み跡も明瞭になって新たなガレの堆積もなくなり、崩落の影響も落ち着いてきた印象を受けていました。
四尾根終了点からアプローチできる事は知っていたのですが、ネットの記事も山荘の一つのみで、そんな現状の中でCガリーに懸垂下降する自分の気持ち次第となっていました(弱っ! 帰ってこれないかもしれないし。。。
※ 表記しているピッチグレードは自身の体感グレードです。
■ 入山~BCまで
記事は北岳ピークハント隊にお任せ。
■ BC~四尾根取り付きまで
Bガリー大滝下の雪渓は縮小してシュルンドも開きダイレクトに正規ルートに取り付けないため、20m程下の雪渓末端から右壁面を10m程直上し、残置がある場所から細かいホールドのあるスラブをトラバース。朝一なんで緊張しないはずなし。アプローチシューズから履き替えておいて助かった。
Bガリー基部の雪渓
Cガリー ヒドンスラブ付近の雪渓(アプローチに影響なし)
今日は他にも雪童など四尾根に数組入るとのことだが、Bガリーからアプローチしているのは俺らだけのようで下には誰も来ないみたい。3尾根を跨いでCガリーを望むと1パーティー。ヒドンスラブをフリーで抜ける旨を伝え、先行を譲って貰いトップで四尾根テラスに。
■ 四尾根
1P目はふくだが正規ピッチで40mでビレイ。2ピッチ目を40m伸ばしてからビレイ点を構築しようとしたけど、中央稜へ継続するため城塞下の待ちで時間がとられる訳にもいかないので、バットレスをトップで抜けるべくそのまま同時登攀を告げて垂壁下まで。そのあとはフツーに正規ピッチを切って2時間20分で四尾根終了点のテラスへ。マッチ箱の懸垂でも時間短縮のため新しい技を使いましたが、混雑していなければ意外とイケます。
(四尾根は俺にとって今更感が漂っているので割愛気味)
必殺技炸裂中...です
暫し休憩を取っているとピークハント隊(って言ってもやごさん一人だけど)から山頂に到着との入電。これから継続する旨を告げて中央稜にアプローチ開始。
■ 中央稜
四尾根からみた中央稜全景
アプローチ 50m懸垂
四尾根から潅木を使い50m1ピッチの空中懸垂でCガリーに下降。
懸垂支点
ここに行くのがちょっとコワい。
空中懸垂に移るのもコワい(^^;
1P目 40m Ⅴ級- ふくだ
正規ルート2P目のリンネ中間の残置支点からリンネのどんツキまで直上し、ホールドの乏しいスラブをトラバース。一段降りてハング下の残置にてビレイ。(ある意味核心かも)
リンネどんツキまで直上
ハング下のビレイ点
けっこうキケンなスラブ
2P目 40m Ⅳ級+ こうの
残置上の支点豊富なハングを越えて、右のリッジに移り、ホールドは豊富だが露出感のある傾斜の強いリッジを直上。傾斜が緩んだ小テラス状の残置にてビレイ。
第二ハング
ハングを越えて
足下にはCガリー
大ハングの上のリッジのため露出感と高度感はモリモリ
まさかあれを登らないよなぁ...ってな感じで更に傾斜がまします。
が、手足は豊富
ビレイ点手前で傾斜が緩み一息
3P目 45m Ⅲ級+ ふくだ
出だし急なフェースを越えて、多少傾斜の落ちたリッジ左側面を直上し、テラスの残置にてビレイ。
出だしはちょっと傾斜が強いですが手足は豊富
後半のフェース
4P目 45m Ⅲ級 こうの
傾斜の落ちた草付リッジを直上。後半はザレ場を左の這松帯から巻いて小ピーク上の潅木でビレイ。ランナーとなる残置は一切なし。
出だしは 階段状の草付から
後半はザレザレ三昧
左の這松帯を頼りにザレを巻く
このザレはかなりヤバいです。
後続がいるなら細心の猫足で抜けましょう。
不用意に落石させるようなら来ちゃダメですピッチ。
最後のザレを抜けるとピークハント隊が。。。
あそこが山頂です。
5P目 65m Ⅲ級- ふくだ
浅いコルを越えて階段状を乗り越すと北岳山頂。岩角でビレイ。
このピッチは登攀具を外して歩いて行けますが、
念のためアンザイレンのまま。
これで完了。山頂です!
最後に...
実は崩落後の偵察だと軽口を叩くおもて面とは裏腹に、崩落後の記録がほとんどないためのルートへの不安と、果たして登れない可能性があるルートへ取り付いて良いものかという葛藤が多分にあり、そのプレッシャーを跳ね除けるのに必死でした。
唯一、崩落後の状況をレポートすることだけが心の支えだったかも(笑
終わってみればルート中の危険個所もなく安定していてトポ通りのルートグレードだったのですが、今回はルート中の浮石や残置の状態に不安がある中で細心の注意を払いながらの一手一足はそれこそ手探りでの登攀となり、楽しむというよりは状況把握のために登っていた時間が大半でした。そのため、登攀中の不安や緊張感以外にも、時折視界の片隅から感じる露出感や高度感を楽しめずに何のために来ているんだという自分への焦りもありました。まぁ、マイナールートのオンサイトみたいなもんなんで仕方ないんですが...。
登攀しながら日本第二位の山頂にダイレクトに抜けるルートは痛快です。
正規中央稜ノーマルルートの2ピッチ目途中からのスタートで、ルート中の最高ピッチグレードはRCC 5級-(トポだと4級+)の全5ピッチのルートなのですが、リンネ取付きまでのアプローチやルーファイなどシビアな対応が要求されたりします。
デシマルグレード(フリークライミング)とRCCグレード(アルパインクライミング)の違いが理解できるようになってチャレンジすればきっと楽しめるルートだと思います。
しかし、北穂東稜などのように某ヤマサイトに「お奨めのバリエーションルート」などと紹介されて、痛快なルートがビレイも登攀も定かではない初心者でごった返すようになって欲しくないと切に願うばかりです。
継続すると疲れますが、あと2-3回は中央稜を登らないとイカンですな。
また来年 (^^)v