【場所】杓子岳 A尾根
【構成】こうの・やご
【形態】雪稜
【天候】快晴
【行程】
4/28(土)
猿倉駐車場[]起[]発--[]猿倉台地--(双子尾根経由)--[]樺平BC(幕営)
4/29(日)
BC[2:00]起[3:25]発--[4:00]奥双子のコル~杓子沢トラバース~A尾根下部岩稜帯--[4:35]AB間ルンゼ--[4:50]B尾根下部雪稜--[5:30]B尾根トラバース--[6:00]A尾根取り付き--[9:45]終了点 杓子岳山頂[10:30]--[11:55]BC 撤収[13:10]--(長走沢経由)--[14:10]猿倉駐車場
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2018シーズン最後の雪山は、超マイナールート(ネットではレポート皆無)の杓子岳 A尾根とD尾根。下降は一昨年の悪天と昨年のアクシデントで2年連続でジャンクションピークまでしか届かなかった双子尾根を使う予定で入ってきました。
初日は双子尾根隊と合同でBC予定の樺平まで。
(樺平までは双子尾根隊の記事にお任せ)
■ 奥双子のコル~(杓子沢トラバース)~A尾根下部岩稜帯まで
樺平BCから奥双子の頭を越えて奥双子のコルから杓子沢をトラバース。昨日は偵察もせずに入山祝いを始めてしまったため、何度も見返した地形図の記憶と薄簿の中に浮かぶ岩稜帯を擦り合わせて進んで行きました。初日の双子尾根のアプローチから確認したA尾根は、雪面を間において下部にも大きな岩稜帯を有しているようで、間違って取り付かないように地形をイメージしながらA尾根下部の岩稜帯基部を回り込んでAB間ルンゼだと思われる場所へ。間近でみるA尾根下部岩稜帯は圧倒されるくらいデカく落石跡も多い岩稜です。
AB間ルンゼまで来るとその先にD尾根取付きの左ルンゼが見る。広く感じられる杓子沢も実際に足を踏み入れると意外に狭いようです。
A尾根の取り付きも定かではないので、このままD尾根に転進しようかとの誘惑に駆られるが、アプローチから見たD尾根上は雪が付いていないようで、マイナールートで撤退も困難になるといけないので予定通りA尾根を目指す。
■ AB間ルンゼ~B尾根下部雪稜~岩峰トラバース~AB間ルンゼ
A尾根下部の岩稜帯基部からAB間ルンゼを詰めていくと、A尾根とB尾根が狭まり小滝状になった短いゴルジュでは箇所の雪面が雪崩で掘られて溝状になっている。
幅1.5m、深さ2m程。 この溝はAB間ルンゼの上部から続いています。 |
流水もあるようでこのままAB間ルンゼの雪面を詰められないので、B尾根側から高巻くつもりで潅木がある雪面へ。
が、B尾根下部はロープを出した方が無難な傾斜の雪面で、簡単にはAB間ルンゼに戻れない。(実際、A尾根の全ピッチより傾斜があった気がする)
むー、敗退感が漂っているような.....。
B尾根下部。ロープ出した方が良かった...かも...。 |
B尾根から見るAB間ルンゼと雪崩の溝 |
樺の木が見える稜、あれがA尾根! |
だいぶ明るくなってきた。
AB間ルンゼへの復帰ルートを算段していると、隣のA尾根上に登山大系に記されているA尾根取付きの目安である稜上の樺の木が1本っ!
目と鼻の先にA尾根があるのに取り付けずに敗退かぁ。まぁ初見だし仕方ないかなぁなどと言い訳を考えながら、それでも少し上の岩稜帯での懸垂に可能性を託して岩峰基部まで登り、基部のシュルンドをヘツっていくとなんとかトラバースできそうな感じ。
よしっ。ここからロープ出しましょう。
B尾根の下部岩峰 |
1P目 岩稜帯トラバース~AB間ルンゼ 20m こうの
B尾根 岩峰をAB間ルンゼまでトラバースし、
アックス2本とスノーバーで折り返しのボディビレイ。
B尾根 岩峰をAB間ルンゼまでトラバースし、
アックス2本とスノーバーで折り返しのボディビレイ。
あまり根が張ってない潅木。 気持ちだけで支えてるビレイ支点ってやつ。 |
岩稜帯をトラバース中。 見た目は凄いけど多少のホールドはありました。 |
■ AB間ルンゼからA尾根取り付き~A尾根
2P目 75m やご
(ちなみにロープはダブル60mです)
AB間ルンゼの雪崩で掘られた2m程の溝を跨いで
A尾根左側面の広い雪面を樺の木のあるA尾根上へ。
樺の木で支点ビレイ。
溝の両脇はほぼ垂壁。
どうやって渡るか心配だったけど、幅が狭い場所を探して少しクライムダウンしたと思ったら足を広げて跨ぎ、反対側の雪面にダブルアックスを打ち込んで体を引き上げ一気に乗り上がったっ!
なんかスゴイ技を見たような...。
自分も同じ技を使ったけど、足を広げるにはかなり勇気が必要な幅なんですが。
溝を越えるやご |
B尾根から見るとかなりの傾斜だけど、取り付けばそれほどではなかった。 |
3P目 75m こうの
傾斜の落ちたA尾根上の雪稜を伸ばして、
雪面でスタンディングアックスビレイ。
こんなリッジ。雪もそこそこ締まっていて爽快。思わず歓喜の雄叫び(笑 |
背景には杓子沢が広がる快適なピッチ。 |
4P目 55m やご
第一岩峰下で開いているクレバスを越えて、
一部雪が途切れている基部を左に出て支尾根上の雪面でビレイ。
クレバスで難儀してたけど、フォローしてみるとブリッジ状になっていて確かにコワい。
もう少し雪が緩んでくるとルート取りが難しくなっていたかも。
雪があれば岩峰の凹角を直登できると思われる。
第一岩峰。 |
クレバスを突破中。 |
左に出るルートはこんなカンジ。 |
ビレイ点から見たクレバス。遠くに樺平も見えます。 |
ここまで来ると杓子岳山頂の黄色い指導標と登山者の姿が見えようになりました。 |
双子尾根隊も山頂から叫んでいました。
しかし、山頂直下の岩壁からはかなりの頻度で岩が崩落して岩雪崩が頻発していました。
この時間にAB間ルンゼに居たらヤバいこと必至。
5P目 75m こうの
稜側面からA尾根上に戻り、傾斜の落ちた緩いナイフリッジを第二岩峰下まで。
雪面でスタンディングアックスビレイ。
A尾根側面。 |
ここも爽快ピッチ。今回は快適ピッチが担当です。 |
ビレイ点のやご。 |
第二岩峰。雪があれば隠れてる気がする。 |
快適なんだけどかなり暑く汗だくです。 |
6P目 55m やご
第二岩峰下のクレバスを右に巻いて、 雪稜を第三岩峰下まで。
雪面にてビレイ。
クレバスを右に巻いて。 |
樺平BC。 |
やごには今日初の快適ピッチでした。 |
第三岩峰下のクレバスと辿ってきたA尾根。 |
隣の双子尾根JP付近を下降するグラッチェ双子尾根隊。 |
7P目 60m こうの
第三岩峰下のクレバスを左に乗り越えて雪稜を伸して、
雪面でスタンディングアックスビレイ。
クレバスだらけでルート取りを暫し思案。とりあえず左からかな。 |
8P目 80m やご
山頂直下の薄い雪稜を登り、A横ルンゼ源頭を双子尾根にトラバース。
目の前のスカイラインは双子尾根。 |
山頂下はクレバスだらけなので双子尾根へトラバース。 |
既に双子尾根上。 |
9P目 50m こうの
双子尾根最後の岩稜部を左に巻いて、
山頂手前の雪面でスタンディングアックスビレイ。
あそこが山頂。 |
最後はロープを30mほど引いて山頂へ。 |
山頂から見下ろすA尾根。(左手前の尾根) |
拡大。 |
こちらはB尾根。 |
ここ10年近く人が入った事がないと思われるA尾根は意外に快適でした。
杓子岳はマイナールートの類ですが、樺平をベースにすれば残雪期でもノートレースのルートを楽しめるメリットがあります。
もう少し雪が解けずに付いている状態のA尾根なら、
しっかりしたルーファイと雪稜登攀の技術が身に付いている人向けの
比較的容易なグレードの雪稜だと思います。
しかし、上部からの落石や取付きの不明瞭さなどを
考えると安易にはお勧めしませんが...。
翌日予定していたD尾根は尾根上の雪がほとんどなく、
ナイフリッジを藪漕ぎする可能性があるため中止にしました。
D尾根は来年ですね。
お疲れさまでした。
しかし、今年の残雪期は暑かった。
PS
双子尾根下山中に登ってきた3人パーティーがどうなったか興味があります。
双子尾根って一応バリエーションなんですけどって伝えたけど、
バリエーションの意味が分かってなかった気がする。
双子尾根JP付近でもアイゼンを履かず、ピッケルも装備してないんですから。
みなさんはしっかりとした装備と技術で臨んでください。